焔灰 / 作家より

焔灰

ある秋の夜中に街が起きだした。

目蓋の奥で気配を辿り、彼の地へと向かう。

写真機を片手に。

紅く焦げる夜空の下、

気化した誰かの思いが 白くて温い壁を

作っていた。

壁が身体をすり抜けて行く。

身体が壁をすり抜けて行く。

立ちのぼる焔は、逃げようと足掻く夜を

捕まえていた。

涼風とともに闇が街を再び駈けて行く。

焔に包まれし者達は灰となり姿変えていた。

彼らはもう何にも燃やされることのない

塊の誕生の証となったのだ。

桑嶋維