永遠のアイドル

原文(英語):諸橋和子/セインズベリー日本藝術研究所

桑嶋維(クワシマ ツナキ)は、儚い永遠の影を追っていました。

永遠は存在するのでしょうか?

それは実感出来るのでしょうか?

レンズは、それを捕えることが出来るのでしょうか?

桑嶋の作品は、その型破りな表現で人々を魅了し、同時に忘れられない衝撃があり、絶賛されています。

10年以上にわたって桑嶋は死と永遠の間での相反関係を視覚的に洗練された叙情詩調の表現においてより明瞭にしました。

永遠という存在に我々の望みを投げることによって、彼は歴史や文化を通して生死という命題の解決の糸口を作品化して我々に問いかけています。

桑嶋が「永遠」の概念を探るために撮影したものは、日本の有史以前の縄文時代(14,000-300BC)の土偶(粘土小立像)と器です。

多くの場合、人間の形を表現したと思われるこれら興味深い考古学オブジェクトー土偶や土器への考察を行うことによって、彼は健康と繁栄を求めて具象化された土偶や土器によって彼らの新石器時代の社会生活環境と現代日本社会とをつなぐ表現を試みています。

全く文字がなかった縄文時代の人々は彼らの世界観を伝えるために精巧な粘土オブジェクトを作っていました。土偶は、たとえば、治癒的な特性があると思われていました。

小林達夫教授によると、土偶は、病気や様々な行為によって苦しむ人々の代理として作られて、健康回復や祈願成就することで壊されました。実際には、考古学的な発掘調査では、装飾を施した土偶のほとんどは身体の部分を意図的に破損させていたことが分かっています。桑嶋は無駄なように思われる土偶の破壊行為に当惑していました。

しかし、おそらくそのような華やかなオブジェクトー土偶を破壊することは私たちを「人間」として形成する為に必要な要素の一つかもしれません。

人が備えている力よりもより強大な力を必要だと想像し、それを欲し、願うが為に、人が持ちうる能力を出し切って作ったものを敢えて破壊する行為ーたとえ願いがこもって無いとしてもーこの行為は人間と他の生物とを分けるある種の能力、行為です。

この観点から、桑嶋は、人間の心の断片として粘土ー土偶の破片を見て、そして愛する人の幸福を祈願する意志が永遠の人間に備わっている感情であると考えています。

ニコール・クーリッジ・ルーマニエール教授(セインズベリー研究所リサーチディレクター/大英博物館学芸員)は、桑嶋の写真のスタイルは彼の作品主題の本質を追求するために尽くしているとして、「桑嶋維の作品は縄文人らの暗黙の物語を示唆していて魅力的であり、彼は言葉を用いずに感情に訴えかける独自の世界を創り上げている。」と評しています。

桑嶋がこれらのオブジェクト「永遠」の存在を捉えている間、彼は同時に永遠と崩壊のパラドックスを見るものに連想させます。

「永遠」が本当に永遠になることができるんでしょうか?

彼が魅了されている永遠を阻害する現象である崩壊や腐敗に対する彼の考えは、彼が選んだ制作材料で最も明瞭に表現されています。

たとえば、コロタイプ・プリントやプラチナ・パラジウム・プリントやインクジェット・プリントがあり、それらを所謂デッドストックの印画紙や数多の種類から選び抜いた和紙や、最新プリントに対応して作られた新しい紙等にプリントや印刷する事によって、勿論、それら作品のアーカイブの安定性=命が変動し、それぞれの「永遠」を例示しています。

彼が創りだした「CUBE(キューブ)」は、作品をカプセル化して保護し、それは「永遠」を閉じ込めて保存しようとする手段の具象化であります。

「CUBE」と呼ぶ未処置の鋼のフレーム箱に入れることによって、やがてはこれらの鋼のケースはさびて、彼ら自身の自然な腐敗(=永遠の終焉)して行くプロセスが始まり、またその運命に逆らう行為(=延命)としてのメンテナンスを、生かせたいだけ続けていかねばならないという苦闘を強いることで桑嶋は作品所有者に「永遠」を実感させる事を要求しました。

彼は、「永遠」を保存することができるかどうか尋ねているのです。

CUBEの頭のマネキンは、我々がどのように『永遠』を体現するかという物語を示しています。これらのマネキンの頭部に据えたCUBEは、鏡であるものを含む両面イメージで構成されています。

見る者の顔を映す鏡面では、日本の古代の文化または日本の『記憶』を例示して、有史以前の小立像のイメージを表現しています。

桑嶋の考えにおいて、我々の個人の自己認識は、我々自身の個々の経験と我々の古代の「永遠の記憶」の現れなのです。

「桑嶋維は、我々のは我々の普遍的な実存主義の願望を探究する卓越した芸術家です。」と、水鳥真美( セインズベリー日本藝術研究所総括役所長)は、コメントしています。

そして、続けて、

「彼の仕事は、地理歴史上の文化的な境界を越える深い方法で、我々に話しかけます。

我々は桑嶋の作品を 2010年に セインズベリー日本藝術研究所 主催で開催された「UNEARTHED」展(英国ノリッジの the Sainsbury Centre for Visual Arts美術館) で展示することができました。ギャラリーに展示される縄文土偶の彼の写真は、年齢、性別、文化または歴史に関係なく、観る者に想像力を湧き立てて、多岐にわたる方面から桑嶋維の作品展示に敬意を頂きました。」と彼の作品を賞賛しています。

桑嶋維は、大木記念美術作家助成基金等を受賞した日本の芸術家です。

彼は、1994年に美術と写真撮影をセントラル・セントマーティン・カレッジとロンドン・カレッジ・オブ・プリンティングで研究しました。

1998年に日本に戻る前に芸術写真の主部であるロンドンに彼は住んでいました。

彼は日本では、東京と山梨県で活動しています。

グループと単独の展示(京都で奈良美智と他の著名な日本のアーティストとFoil Gallery主催の現代美術展(開催地:禅居庵/京都)や、現代美術展示のためにセインズベリー・センターで開催され、最近、公に展示された展覧会を含む)で、桑嶋維は全国的に、そして、国際的に、広く展示されて芸術家として認知されました。

セインズブリー研究所で 2013年8月21日水曜日に開催される特別な講義があります。

ロンドンのUNIONのギャラリーでのギャラリー・トークは、8月22日木曜日に開催されます。

 

諸橋和子/Kazz Morohashi

アメリカ育ちの日系アメリカ兼イギリス人。英ロンドン東洋アフリカ研究学院にて美術史修士 を取得後、英セインズベリー日本藝術研究所で数々の日本美術と文化の研究と国際的発信・促進に関するプロジェクトに関わる。現在は独自の制作活動やキュレーションも行い、企画は南アフリカから日本やイギリスをベースにした プロジェクトに関わっている。クリエイティブのネットワークづくりにも積極的で、国内外問わず今後も新たな出会いと交流に大きな期待を寄せる。