朱殷 / 作家より

朱殷

四億もの同胞を敵に回して勝たねば、僕らはこの世に生まれてくるこ とはできなかった。

奇蹟の勝利者たちは、この地球上に六十億の鼓動を響き渡らせている。

生きているという幸運の連続にいつしか麻痺してしまった僕らは、 自らの存在を個々で実感することができず、常に他者を必要としている。時に異質なモノを全て排して他と群れを成し、時に自分だけの存在 意義の手掛かりを捜す為に他と競い合う機会を窺う。

僕らは他者や自分までも傷つけながら、この矛盾を繰り返す。勝利者の証として命を獲た僕らは、闘うまでに生を欲する動物だ。

肌や髪、瞳に様々な色を持つ人々で世界は鮮やかに着色されている ように見えるが、その下地となっているのは、僕らの内を流れる血の 色だけなのだ。

その色こそが、生きとし生けるもの全てに分け隔てる ことなく、神が与えし唯一の色-絶対色-というべきものである。

光り射す場所にしか色は存在しない。 真っ白と真っ黒との間に閉じ込められた無数の色の中から、自分だけ の色を僕は解き放したい。

僕が見ている色は、君の瞳にも同じに映るのだろうか。

桑嶋維